こんにちは。自伐型林業チーム7期生の大熊です。
突然ですが、問題です。
樹木の剪定などである程度太い枝を切り落とす場合、下の図のA、B、Cどの位置で切断するのが木への負担が少ないでしょうか??
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はい。
では、さっそく答え合わせです。
まず、Aの位置で枝を切り落とした場合。
図では少し大袈裟に表していますが、木の枝の付け根にはよく見ると若干の膨らみがあり、その膨らみは枝を支えるために張り出した幹の一部と言われています。
ですので、Aの位置での切断は、枝だけでなく木の本体(幹)まで切り落としていることになり、大きなダメージを受けてしまった幹は新しい樹皮を充分に作りだすことができないまま、ただでさえ広い切断面をいつまでたっても覆うことができません。
また、幹と枝の間には、空気中を漂う「腐朽菌(木を腐らせてしまう菌)」の進入を防ぐための防御層があるのですが、Aの位置での切断はその防御層まで傷をつけます。
よって、Aの位置での枝の切り落としは、幹が大きな傷口を塞ぐことも出来ないまま、多くの腐朽菌の進入を許すこととなり、結果的に木の枯れや病気の大きな要因となってしまいます。
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次は、Bの位置で切り落としてみます。
この場合は、上で説明しました枝の付け根の膨らみ(幹部分)と枝との正しい境目で切り落とせていますので、幹や、枝の付け根の防御層に傷がついていません。
よって、Bの位置での切断は、腐朽菌の進入を防ぎつつ元気な幹が素早く切断面を覆い隠すことができ、木への負担は少なくなります。
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では、Cの位置ではどうでしょうか?
明らかに枝のみ切り落としていますので、幹へのダメージはなく、枝の付け根の防御層も守られてはいますが、いざ幹が新しい樹皮で切断面を覆い隠そうとしても、残った枝部分に邪魔されてしまいます。
そうこうしているうちに、葉がなくなり役目を終えた枝は枯れ、その枯れ枝の割れ目から腐朽菌が進入増殖。
樹勢の強い元気な木であれば防御層で食い止めることもできますが、何らかの原因で樹勢が弱まり少しでも隙を見せてしっまった木は、枯れ枝で勢力を増した腐朽菌に防御層を突破されてしまいます。
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ということで、
問題の木への負担が一番少ない切断位置の答えは、
Bということになります。
ただし、いくら正しい位置で切り落としても、荒い切り方で切り口周りの樹皮を剥がしてしまった木、高齢樹や何らかの原因で樹勢が衰えてしまった木では、腐朽菌の進入を防ぎきれないこともありますので、ご注意ください。。
そんなこんなで、
山にやさしい小規模林業家を目指し、ここ佐川町の地域おこし協力隊となって一年半。決して一筋縄ではいかない林業の奥深さに圧倒されつつも、なんとか基礎は身についてきたかな?と、更なるスキルアップに勤しんでおります。
そんな中、協力隊の先輩から教えていただいた「特殊伐採(アーボリスト)」というお仕事にも興味を持ち、林業の習得と並行して徐々に資格の取得、練習を始めました。
「特殊伐採」とは何かと言いますと、住宅地などの狭い空間で、大きくなりすぎてしまった木や、枯れだしている危険な木など、生活の支障となっている高木を、根元から一気に倒すのではなく、木の上の枝から徐々に細切れにして処理していく伐採方法。
また、その技術は木を完全に伐り倒すためだけでなく、高木への負担を最小限に枯れ枝の剪定をするなど、弱っている木を助けることにも活用できるため、その技術を極めた方は「樹護士」などと呼ばれ、木を守る人として活躍されています。
冒頭の問題は、その勉強の一環として受けたアーボリストや樹木医の研修で、度々耳にした木を守るための重要なポイントとして、ぜひ皆さんにも知っていただければなと共有させていただきました(もっと詳しく知りたい方は「バークリッジ剪定法」などで検索下さい)。
「特殊伐採」のお仕事は、まだ知名度も低く、安全優先の作業手順に加え高額な装備に経費が嵩むことでの少々お高めにみえる見積などから、すぐに多くの需要が見込めるものではないかもしれませんが、徐々に深刻化している住宅地の高木問題に対しての一番の解決策としていつしか、どなたかのお役に立てる日が来ると信じ、林業と並行して準備だけは進めて参りたいと思います。
尚、佐川町の地域おこし協力隊の現役生、卒業生には「特殊伐採(アーボリスト)」資格を有し実践も積んできている方が多数います。
もし、お困り方がいらっしゃいましたら、手遅れとなる前に是非ご相談いただければと思います。
それでは皆さん、本日もご安全に。